第42話 ひとみ★むちぱつ日記

午前中、先に退院したやけどの少女とその母親が、
外来に来たついでに、病室にもやって来た。

この母娘からの差し入れが、
地下の売店で買ったペットボトルのお茶と水だった事から、
その後の井戸端会議で、
差し入れや見舞い品には飲み物がいい、と話し合われた。

それからあたしは午前中のうちに、
3階のカフェテリアに行ってみる事にした。

前に午後に行った時、
ほとんどの商品が売り切れてなかったからである。
午前中はさすがにいろいろ置かれてあった。

あたしはここのメニューについて、事前に看護師より、

「スパゲティなんか特に油ですよ」

と、油情報を得ていたので、
迷わずお弁当コーナーのナポリタンを選んだ。

そして、それを昼食時に
いつもの病院食のおかずに食べたら、
さすがにお腹がぱつぱつになった。
病院食も、この日は魚のフライで意外と油だった。
やけに油がおいしい。

退院後もしばらくはステロイドの内服が続くから、
これで太ること間違いなしだ。

そして、おやつの時間にもカフェテリアに行き、
ナポリタンを買った時に気になった、
カシスソーダを飲む事にした。

ここの「カシスソーダ」は、カシスがかなり濃いめだ。
そして、中に水色やピンクなど数色の丸いゼリーが入っている。
しかしながら、フラッペ用のストローでは
このゼリーがすくいにくい。
ここは正式にスプーンをつけるべきところだろう。

カフェテリアから戻ってしばらくした頃、
ななめ向かいのベッドの、
手を吊っているおばちゃんがおまんじゅうをくれた。

このおばちゃんは、この病院の近くの農家の人間だから、
見舞客も頻繁である。
おまんじゅうは、そんな見舞客からもらった物のおすそ分けだろう。

夕方、5時過ぎに主治医3号...ヘンなおじさんと
その仲間の女性精神科医がやってきた。
どうやらこれが精神科の教授回診らしい。

ヘンなおじさん、丸山先生は前回の血液検査の結果と、
これからの薬について話した。

まず、今夜また気分安定剤を増量するとの事。
それから退院後も、ちょくちょく採血して、
血液濃度を測りながら薬の量を調整していく事。
頓服の安定剤は、今飲んでいる物と同じ薬を、
1回2錠まで飲んでいい事。

しかしあの薬は、翌日まで体に残るので、
病院ならともかく、家では日常生活に支障をきたしてしまう。

そこであたしは丸山先生に、
もっと短時間型の、キレのいい安定剤はないかと聞いてみた。
先生はあるにはあるが、依存性が高い上、
あたしの体にあうかわからないからと、
独特の「まあまあまあ」な調子で、あたしを丸め込んだ。
ち。
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