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第38話 外科の愉快な仲間たち
入院16日目。
朝4時に目が覚めてしまい、
トイレに行って再び寝ようとしたものの、
なんだかいらいらと嫌な興奮を覚えてしまい、
寝付けなかった。
昨日の寺内先生の、
「くすっ」という例のいやらしい笑いを
思い出したのをきっかけに、
彼についてしょうもない事で逆上してしまった。
1.他人が落ちている時に笑うのはやめろ。
2.他人と話をする時、股をもみながら会話するのはやめろ。
3.ひげは伸ばすのか、剃るのか、どっちかにしてくれ。
朝食前、偶発的に行なわれた井戸端会議で、
医師の話題が出た時、この事を話してみたら、
おばちゃん達に笑われてしまった。
最近の井戸端会議では、
あたしの隣のベッドのおばちゃんのところに
朝いちでやってくる、外科の医師チームの事がよく話題になる。
彼らチームは5人前後で構成されていて、
ひとりを除く全員が、
もっさいおっさんと同じくらいでかい体をしており、
朝早くからやたら陽気なのである。
軽躁状態のやつらが、束になって朝いちでやって来る
と思ってもらってもらうとわかりやすい。
その外科チームのリーダーは、
でかいメンバーの中でも群を抜いて、縦にも横にもでかく、
その上スキンヘッドときているので、格闘家のようだった。
あたしはこの外科チームの事を、
「格闘家先生と愉快な仲間たち」とした。
どうやら部屋の者は、
この外科の愉快な仲間たちと隣のおばちゃんの
絶妙なやりとりを聞くのが楽しみらしい。
この日は木曜日なので、回診は午後から教授回診だった。
今日はそのあと寺内先生が、
母に病気の経過と退院の説明をする事になっている。
あたしは午前中にシャンプーしておく事にした。
シャンプーのあと、1001号室でも同室だった、
窓際のばあさんより和菓子を頂いた。
午後1時過ぎに母がやって来た時、
前に頂いたものと合わせて母に渡した。
今回の教授回診では、さらに多くの医師が
ぞろぞろと教授の後ろについて来た。
そしてやはりもっさいおっさんは、
日頃とはうって変わり、
縮み上がった態度でおずおずと教授に、
あたしの病名とその経過を説明した。
教授はあたしの口の中を診て、
それから腕や背中の発疹を診ると、
経過は順調で予定通り土曜日に退院だと言った。
...激しく鬱な宣告だ。
それから母とふたりで薬を塗ったり、
着替えたりしているうち、
看護師があたしたちを説明室へと呼びに来た。
説明室なる小部屋はナースステーションの右隣、
皮膚科処置室との間にある。
部屋の中は3〜4人用の小さな会議室のように、机と椅子があり、
ドアの向かいのカーテンで仕切られた裏口から、
ナースステーションに通じるようになっている。
あたしと母がドアから入って、椅子に座ったとほぼ同時に、
寺内先生がカーテンを開けて、
ぺたぺたと例の内股で入って来た。
彼は母と硬い口調で挨拶を交わして、
あたしの向かいの席に座った。
激しく鬱な説明が始まる。
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