第24話 便秘である。

激躁だと思っていたら、
案の定すぐに鬱スイッチがかちりと入ってしまった。
頓服の安定剤はまだ許可が出ないらしい。
鬱になったらただただ鬱になりっぱなしだ。
寺内先生は一体どういうつもりなのだろう?
もうそろそろいいかげん許してほしいんだけど...。

この日は、窓際の歌の娘じゃないほうの娘...
あたしと同じ列にいる、
やけどの娘が午後より外出していた。
1年半も入院していて、明日やっと退院だとか。

夕食時、この母親からいちごを2個いただいた。
母から物のやりとりは、
必ず報告するよう言われていたので、
あたしは忘れないうちにその事を
入院手帳の今日の日記に書き加えた。
それが入院9日目だった。

入院10日目。
...便秘である。
朝食後、しばらくして腹がごろごろしだした頃、
ちょうど寺内先生が内股でぺたぺたとやって来て、
「関屋さんおはよー」
と、妙な訛りでもそりと言いながら、
カーテンを開けるからである。

あたしは処置中にも
その事をもっさいおっさんに言った。
便秘はあたしにとって結構深刻な問題なのだが、
それを彼はくすっと笑った。
むぅ。

処置後、今日も散歩に出たが風が強過ぎ、
院内中心に行なうことにした。
外来診療が始まっていて、
1階も2階も人でいっぱいだった。

皮膚科の前を通った時、
あのおっさんもここで働いているのかしら、
退院後はあたしもここに通う事になるのかしら、
と思った。

部屋に戻ると恒例のプリンの時間だった。
この頃はもう、食べる前にラベンダー色の、
痺れるうがい薬を使う事がなくなっていた。
粉霧薬も下手をすれば忘れてしまうくらいだ。

プリンを食べていると、
窓際のやけどの娘の母親がやって来て、
もう使わないからとティッシュを一箱くれた。
今日、いよいよ退院らしい。

窓際の母娘は、昼食後、
あたしが風呂からあがってもまだいて、
迎えを待っていたが、
とうとうその迎えがやってきて退院して行った。

彼女のいた場所はすぐに
看護師たちの手で片付けられ、
新しいベッド、新しいテレビ台、
新しい衣装ケースが並べられた。

やる事がないのであたしは洗濯する事にしたが
、洗濯機の中を見ないでお金を入れ、
洗濯機の洗浄を始めてしまった。
洗浄が終わって洗濯機を開けた時、
他人の洗濯物があるのに驚いてしまった。

お金がもったいないとは思ったが、
誰もいなかったので、
あたしはそのまま隣の洗濯機を使う事にした。
今度はちゃんと中を確認したから大丈夫だろう。

洗濯の間、おやつにゼリーを食べていると廊下から、
「どうしてまだ洗濯が終わっていないのだろう」
と、いう声がして、ちょっと気まずかった。
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