第19話 毛穴つき褐色巨大フケ

なんだか口の中がつるつるすると思って鏡を見たら、
なんとつるつるしているのは口の中ではなく、
舌だった。
舌がひと皮むけてつるつるしているのだ。
きもい!!

皮がむけているのは舌だけでなく、
今日は頭皮もむけてきていた。
褐色の頭皮が大きなフケのように、
髪の毛にくっついて取れず、見苦しい事この上ない。

この褐色の大きなフケを、
しごくように髪の毛から取って見ると、
ぷつぷつと毛穴がそのままの形で残っている。
きもい、でもついじっと見つめてしまう。
あたしは枕とその周辺に落ちた頭皮を手で払って、
それから枕の上に2つ折りのタオルを敷いた。

3時頃、母がプリンのついでに、
自分で食べようと買ったバニラアイスを
ちょっと分けてもらった。
それからいつものプリンとバナナ。
ちょっと調子に乗り過ぎだった。

母が帰ってからしばらくして、ちょっと腹が痛くなった。
しかし、それも夕食までには治まり、
夕食ももちろん激しく完食した。
それが入院6日目だった。

入院7日目。
入院してちょうど1週間になる。
この朝は、起き抜けに採尿と採血だ。
採尿は紙コップに採って所定の棚に
置くだけだからいいが、問題は採血だ。

予想通り看護師は採血に失敗し、やり直しとなった。
しかし、寺内...いや、もっさいおっさんとは違って
中でぐりぐりしないだけ痛くはなかった。
また、採血の針が点滴のぶっとい針とは違って、
細いということもあった。
それとも、寺内...もっさいおっさんが下手なだけなのだろうか。

そのもっさいおっさんだが、今朝の回診には姿を見せた。
「会いたかった...!」
あたしはおどけてドラマ風の、
ちょっと大げさな表現をしてみた。
「なんで?」
寺内先生はびっくりしたような顔をした。
「なんとなく」
あたしは笑って質問から逃げた。
2日の間会っていないだけあって、
もっさいおっさんはずいぶん良くなったと驚いた。

あたしも今朝起きて枕を見たら、
上に敷いてあったタオルに、
例の毛穴つき褐色頭皮がたくさんついていて、
枕の周辺にもそれが散らばっていたので、
ぎゃっと驚いたが、これでひと皮むけたらしく、
髪をとかした後はあまり出なくなった。
顔に至っては多少色黒になったかな、
という程度で跡もほとんど残らずに治ってしまった。

寺内先生はあたしの背中に薬を塗りながら、
「水分も自分でとれるようになったし、
肝機能障害もほとんどなくなったようだし...」
と、もそもそひとりごとのように言い、
「点滴はずしてもいいかな...」
と、続けた。
え!!
点滴をはずす!?
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