第17話 謎の主治医2号

歌の少女の隣のベッドのおばちゃんが、
「今日は日曜日だから自分で処置室に行くんだよ。
普段の日も自分で動ける人はそうするんだよ」
と、教えてくれた。

このおばちゃんは髪の毛が少ないので、
最初見た時は放射線科の人かと思っていたが、
肌がちりめん状になっているのを見て、
皮膚科の人だとわかった。 

処置室に行くと、初めて見る先生と看護師が2人がいた。
その先生は寺内先生と同じくらいの年頃だが、
すらりとして程よく長身で、顔立ちも整っており、
こういうのがいわゆる
「かっこいい」先生だろうなと思った。
IDカードによると、この先生は加藤先生という。

この日は3人がかりで薬つけだ。
エステでも3人がかりはないだろう。
いたれりつくせりである。

薬をつけてくれている女性看護師2名も
なにやら年が近そうな感じなのに気が付き、
「今、ここにいる全員、
ひょっとしたらみんな年近い?」
と、聞いてみた。

「そんな事ないですよー、私たちなんてまだまだ」
と、看護師たちは笑った。
「へえ、若いのかあ。
そういや主治医の寺内先生も年近そうだけど?」
「さあ...寺内先生は関屋さんより
もうちょっと上じゃないかなあ」
と、看護師のひとりが言うと、
「そんな事を言っちゃ、加藤先生がかわいそうですよ」
と、もうひとりの看護師が笑った。

「加藤先生って何歳?」
「35...」
加藤先生はぼそりと答えた。
「なんだー、ほぼ同世代じゃん」
あたしは笑った。
加藤先生も笑った。

それにしても、この加藤先生は
看護師たちと交流があるようだが、
それにひきかえ寺内先生は
ナースステーションでも浮いているのだろうか。
まあ、あのもっさいおっさんの暗そうな感じじゃな。

昼食も完食し、また朝の粉霧薬を
忘れている事に気が付いた。
それから友人に手紙を書いていたら、母と弟がやって来た。
このついでにシャンプーをすることにした。

シャンプー台は、トイレの横にある、
洗面所や浴室、コインランドリーがあるところにあった。
ケープはナースステーションで借りることになっていて、
空いていればいつでも使える。

母と弟はまた夕方の道路の混雑を避けるように帰っていった。
夕食も完食で、
はじめて魚の身の繊維も食べられるようになった。
もうちょっとしたら、固形物もいけるようになるだろう。

日曜日なので夕食の時、初めてテレビを見た。
こんなにテレビカードの減りの少ない患者は
きっと珍しいだろう。

夕食後、横になっている時、枕もとの患者名、
主治医名が書かれた札が目に入り、ふと思った。
そういや、主治医は2人だ。
入院してから、寺内先生しか見ていないが、
もうひとりの「外村先生」は一度も見た事がない。
「外村先生」、謎だ!!
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