第42話 ずっと好きでしょ


「将やん、いるなら返事しろよ!!」

俺とちひろの濃密な時間は、
結局ケイちゃんが怒鳴り込んできたせいでぶちこわしになった。
ぶちこわしついでに3人で爆笑して、
その夜はみんなで祝福のごはんを食べる事にした。

「なあ将やん、お前いつ
ちひろちゃんとそんな事になってたんだよ?」

ケイちゃんがごはんを茶わんに盛りながら聞いた。

「俺もそれ知りたい!」

ユウジもその事を聞きたがった。

「それがさ...俺にもいまいちよくわかんねえんだよ。
今日、ちひろが急にうちへ来て、
小倉...前の男とケリつけてきたって言うからさ...」

今日はビーフシチュー。
俺はシチューの中のにんじんをスプーンに取った。

「あ、それね...健太郎のおかげなの」

ちひろが言った。

「中澤の?」

「1週間ほど前、健太郎が
自分の気持ちにケリをつけたいって
あたしの前に現れたの。それであたしも...」

そうだったのか。
それでちひろも
小倉への気持ちにケリをつけてきたって訳か。

「で、なんで俺なん?」

一番聞きたかった事だ。

「だって将弘、今までもこれからもあたしの事、
ずっと好きでしょ?」



ちひろとのつき合いは、
友達期間が長かっただけあってとても自然に始まった。

休みの間はちひろの都合のつく限り一緒に過ごした。

家でみんなとごはんを食べたり。
ショッピングや映画に出かけたり。
ユウジとその彼女とダブルデートしたり。

ちひろが今までひとりで過ごした
淋しい時間の全てを取り戻すつもりだった。



俺たちがつき合い始めた事は、
新学年が始まって間もなく芹沢が発見した。

いつものようにじゃれあっていたつもりだったが、
やはりつき合っている者同士特有の雰囲気があるのだろう。

ちなみにちひろとつき合っていても、
俺のゲイ疑惑は晴れないままだ。

学年が変わったので英語講読の授業がなくなり、
ちひろと席を並べる事はなくなったが、
つき合っているだけあり
学校でも一緒にいる事が多くなった。



ゴールデンウィークも近付いたある午後だった。
俺とちひろはちょうど同じ授業を終えて、
学食でみんなとお茶でも飲もうと、
1号館の裏を通りかかった。
俺たちは連休はみんなで
どこか行こうかと盛り上がっていた。

その時、目の前をやせた、
暗い色調の服装の男が現れた。
小倉だった。
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