第36話 コレクション

試験が終わると休みで、
最初の水曜日にみんなと家で集まった。
今度は沖田と芹沢も一緒だった。

この日はユウジが休みで家にいた。
彼がお茶の準備をしていたところへ
ちょうとちひろ達がやって来た。
沖田と芹沢はちひろと同様に、
この家について驚いていた。

「この家、将やんのおばあちゃんと伯父さんの家だよ」

今度はユウジが彼女らに説明してくれた。

「つまり、下宿屋の管理人のバイトしてるって訳ね」

沖田が核心をずばり突いた。
「そうそう、家賃がいくらで光熱費がいくらだの、細かいの」

ユウジめ、余計な事を。

「姑みたいなおっさんだな」

ちひろがまた俺の事をおっさん呼ばわりした。

「姑じゃなくて家庭的、
おっさんじゃなくてお兄さん。
さっ、茶を飲んだら手伝ってくれ」

「むっ」

芹沢はバイトがあるというので、
夕方で帰ってしまった。

入れ違いにケイちゃんが帰って来て、
だんだん人が集まりだした。

この時、ユウジの彼女も来た。
ユウジの彼女がこの家に来たのはこれが初めてである。
ユウジも小柄だが、その彼女もまた小柄でぽちゃっとしていた。

彼女は一人暮らししていて、
ユウジとは主にそこで逢っているようだった。

食事はイタリアンを中心に、
呼ばれた人が持ち寄ったものもあった。

沖田は食事の途中で彼氏に呼び出され帰って行った。
帰り際に、ちひろとうまくやるのよと耳打ちして行った。

「そういや、将弘くんってしょっちゅうメガネ替えてるけど、
一体いくつ持ってるの?」

みんなが帰る時、ユウジの同僚が俺のメガネの事を聞いた。

「そういや...」

ちひろが俺をじっと見つめた。

「なんだよ」

ちょっと恥ずかしかった。

「太い縁のやつとか、縁なしのとか、
上だけ縁のついたのとか、いろいろ替えてたな」

「メガネをコレクションしてるんだよ」

「へえ...」

ちひろもユウジの同僚も感嘆の声をあげた。

「他にどんなのがあるん?」

ちひろが言った。

「サングラスとか、コンタクトレンズもある」

「こいつのコレクション、
すっごい変なのとかあってけっこうすごいんだぜ」

ユウジが口を挟んだ。

「ぜひあとで見せてもらうといいよ」

ケイちゃんもにやにやしながらその話に入って来た。
そういう事か。

「そう?」

ちひろは聞き返した。
俺は彼らの意図を汲んでちひろに言った。

「じゃあ来なよ」
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