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第27話 ドライブ
ちひろのプライドを傷つけてしまった件について、
どうしたらいいか困ってしまい、
思いきって夕食時にケイちゃんとユウジに相談してみた。
「そりゃあ、ちひろちゃんも傷つくわな...」
ケイちゃんがにやにやした。
「だよなあ...」
俺はがっくり肩を落とした。
「でもさ、傷つくって事はちひろちゃん、
イヴはひとりって事じゃん」
ユウジがごはんをほおばりながら言った。
ユウジはよく食べるので、
今日みたいな鍋の日でもごはんを食べ、
かつ雑炊も食べる。
「そうか、じゃあ将やんもう一度ちひろちゃん誘えよ」
「俺、すでに断られてるんだぜ?ケイちゃん」
俺は鍋の中の鳥だんごをひとつ取った。
今日は鳥だんご鍋だ。
「下手に出るんだよ、
“淋しいからちひろちゃん俺と遊んでー!”ってさ」
「むぅ。
でも、仮にちひろが受けてくれたところでどうする?
イヴだからどこも予約とか取れねえぞ」
そこでユウジが口を挟んだ。
「俺が車貸してやるよ。
メシなんか簡単にして、
ドライブ中心でいけばいいじゃん」
「さすがユウジ、社会人&彼女あり!
イヴ+暗闇+密室+二人きり=最強」
「...そうか?」
俺は怪んだ。
「なあちひろ、もう一度誘うけど
俺とクリスマス遊びに行かねえ?」
ケイちゃんとユウジがそろって
俺の背中を押してくれたので、
俺はもう一度ちひろを誘ってみる事にした。
「将弘、同情はいらないって言ったよな?」
ちひろは冷たい目で俺を見た。
「ちひろに同情したからじゃないもん」
「じゃあ何?」
「俺に同情してほしいの。
俺、彼女いないしひとりでイヴ過ごすの淋しいんだよ。
だから俺と遊んでよ」
「...しょうがないなあ。
で、その淋しい男はあたしと何して遊ぶつもりなんだ?
いつぞやのようなバキバキの本命デートごっこか?」
“しょうがないなあ”?
「いや、友達が車貸してくれるから
ドライブ行こうかと...だめかな?」
「へえ、ドライブとは意外だな。いいよ」
...ちひろにプレゼントを用意しておこう。
「いいか将やん、
今日ちひろちゃんと何があったか包み隠さず全て話せよ」
「俺の車壊すなよ」
イヴの日の昼過ぎ、
俺はケイちゃんとユウジに見送られて家を出た。
車はユウジの青い小さな車で、
夕食はちひろの意見を聞いて
どこかで買うなり適当に済ませる事にした。
ちひろとは彼女の地元の駅前で拾う約束だった。
「ちひろ!」
俺はちひろを見つけると声をかけた。
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