第26話 プライド

小倉の側からすれば、
事件の噂はいろいろと好奇の目で見られるだけで迷惑なのだろう。
だからちひろと距離を置こうとしている。
つまり、彼はちひろをそんなに好きではないのだ。

小倉がどういうつもりなのか分からないが、
そのやり方は汚い。
距離を置いて、いつの間にか
そのつながりが自然消滅する事を狙っている。

高校の頃、彼女が俺をふるのに使ったやり方だ。
...許せない。

クリスマスが近付いて来た。
俺はちひろ達3人と一緒に学食で昼食を食べていた。

女たちの話題はクリスマスだった。
沖田にもあれから宣言通り新しい男ができたようで、
長い付き合いの男がいる芹沢と二人、
イヴの過ごし方について話しはじめた。
プレゼントは何をあげるか、デートはどこへ行くのか。
ちひろはこの話題にはついて行けず、
ひとり淋しそうにしていた。

午後、5号館の廊下で再びちひろに会った時、
ちひろを遊びに誘ってみた。

「なあちひろ、クリスマス遊びに行かないか?」
「なんであんたと遊びになんか行かなきゃいけないの?」

と、ちひろはとげとげしく答えた。

「なんでって...
クリスマスひとりで過ごすなんて癪にさわるじゃん」

「断る。同情なんてごめんだね」

「そんな...同情なんて...!」

「同情じゃん、
あたしが淋しそうにしてたから誘ったんでしょ。じゃ」

ちひろはそういうと、俺を置いてその場を去ってしまった。
まずい。
ちひろのプライドを傷つけてしまった...。
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